時計の針はもう2時半。
大声で泣く君の傍らで、
そっと「もう泣かないで」と囁く僕。
それでも大粒の涙が止まらない君を、
大好きな「真夜中のドライブ」へと誘う。
しんと静まりかえった寝室で、
耳に届く「うん」という朗らかな返事。
僕は君をぎゅっと胸に抱き寄せ、
颯爽とマンションの階段を駆け降りる。
後部座席が君の特等席。
洒落たBGMを…とリストを眺めながら、
彼女のお気に入りのナンバーをセレクト。
鼻歌交じりの君は、いつも決まって、
先ほどまでの涙がうそのようなご機嫌に変わる。
「若い女とドライブかぁ〜」と、
頭を掻きながら、あてもなくハンドルを切る僕。
街角のビジョンに映された「ポパイ」を見て、
「トト“リ”が出てきたよ〜」と大はしゃぎの君。
「ママとも2人で走ったな〜」と思いながら、
小さなレディを真夜中過ぎまでエスコート。
シンデレラ・タイムはとうに過ぎているのに、
かぼちゃの馬車は、まだまだお迎えに来そうもない…。