原発、ですか。。。
お金の流れが変わった! (PHP新書) [新書] / 大前 研一 (著); PHP研究所 (刊)
誰かが言っていたんですけど、一見スゴそうにみて、実はいい加減なのが「経済評論家」なんだそうな。
その理由は至ってシンプル。今年は景気がよくなる、悪くなるという予想をしても当たらないから。だって、もし確実に当てられるなら、バフェットみたいに投資で大儲けしていないとおかしいですよね、というのがその主張の根拠です。
まあ、ちょっと極論めいた感じもしますが、確かに、経済評論家の株価予想とかってあんまり当たらない気がしますし、去年を振り返って「○○さんはこういっていたけどハズレましたネ!」みたいな責任追求をすることもない。肩書きをみると素晴らしい方ばかりですが、意外と適当だな〜なんて思うこともあります。。。
と、前置きはこのへんにして、そろそろ読んだ本のご紹介。
この『お金の流れが変わった!』は、元マッキンゼー日本支社長であり、雑誌などでもちょくちょくその姿をお見かけする大前研一氏の著書。ちょうど今から1年前ぐらいに発刊されたものです。
投資対象という「行き場」を失った「ホームレス・マネー」が世界を翻弄しているという現状を指摘するほか、このままでいけば、日本の国債が暴落して世界から見放され、日本は破綻する、といった自らの主張を書きつづっています。
そして、このホームレス・マネーを活用するには、棚ぼた式に儲かる「原子力発電」を使うべし!とのこと。しかも文中では、「たしかに旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故では多数の犠牲者が出たが、あれはあくまで圧力容器がなく、爆発したら終わりの古いタイプの原子炉だったからだ。欧米や日本の原子炉は圧力容器があって、炉心溶融が万が一起こっても、放射能はすべて中に閉じこめられて、あのように外部に漏れ出すことはない」と断言していらっしゃいます。
・・・今みるとすげえなぁ。この内容。
日本経済が未だに破綻せず、欧州危機を契機に「日本円」へと資金が流入していることを考えると、大前氏の考えとは裏腹に、世界はまだまだ日本円を信頼しているようですし、本来リスクに応じて高くなるべき金利も低いまま。氏が主張されるデフォルトの危機に直面するのはまだまだ先になりそうな感じがします。
まあ、世界の歴史を紐解くと、新興国はいうに及ばず、先進国も結構ちょくちょくデフォルトを起こすのが常みたいですから、日本がいつまでも安泰という理屈は成立しないんでしょうが。。。
そして後半、「原発は安全」というくだり。これに難癖を付けるのは、「後出しジャンケン的」でなんだか不公平な気もしますが、ここまで断言していると、当のご本人もちょっと後味が悪いだろうなぁ〜、なんて思ったりします。
…と、なんだか否定的な意見ばっかりだな。。。
そんなこんなで、今見ると「なかなかな問題作」になってしまった感が否めない一冊ではありますが、サブプライム・ローン問題に端を発したリーマン・ショック以降の世界の流れを概観するには、それなりに有意義な一冊かと。