障害者を活かすためには。
障害者の経済学 [単行本] / 中島 隆信 (著); 東洋経済新報社 (刊)
先日とある雑誌の書評欄で紹介されていたのを見て、手に取ってみました。タイトルは「障害者の経済学」。その名前通り、経済学の観点から、障害者にとってどんな選択肢が合理的なのかを説いた一冊です。
障害者の方々は、いわゆる社会的弱者と呼ばれる人々ですから、彼らを取り巻く状況について論じると、さまざまな分野からの批判にさらされるため、なかなか論じるのが難しいのが実状です。
でも、本書では、あえてこうした「周りの批判の目」をひとまず横に置いておいて、経済合理性に的を絞って効率のよい社会のあり方を考えていきます。
これがなかなかに面白い!
なかでも、本書の中に「比較優位の原則」の話が出てきますが、これが目からうろこでした。
たとえば、A、B、Cという3人がいるとします。
Aさんはとても優秀です。ごはんを作るのが2時間、パンを作るのも3時間でできてしまいます。
一方、BさんとCさんは、Aさんよりも両方とも作業時間がたくさんかかります。ごはんを作るのに6時間、パンを作るのに4時間かかります。
食べ物を生産できる時間は、合計で20時間です。
まずは、みんなが一人ずつ、均等に食べ物を作ってみます。
すると、Aさんは、4膳のごはん(8時間)と、4つのパン(12時間)を生産できます。
一方のBさんとCさんは、それぞれAさんの半分の2膳のごはん(12時間)と、2つのパン(8時間)しか生産できません。
分かりやすくすると、こんな感じです。
ごはん パ ン
A 4 4
B 2 2
C 2 2
計 8 8
ただ、これを、それぞれ得意な方の生産のみに特化しみるとどうでしょうか?
Aさんは、ご飯のみを10膳つくります。一方、BさんとCさんは、2人ともパンのみを作り、5個ずつ、全部で10個生産します。
ごはん パ ン
A 10 0
B 0 5
C 0 5
計 10 10
これを、ご飯とパンが同じ価値と考えて、みんなで分配してみると、
一人ずつ単独で生産していると、Aさんはご飯4膳、パン4個、BさんとCさんはご飯2膳、パン2個しか食べられなかったものが、
Aさんはご飯5膳、パン5個、BさんとCさんはご飯2.5膳、パン2.5個にありつくことができます。
一見すると、どちらの生産にも秀でているAさんは、自分の分だけ生産していた方がいいように思えますが、お互いの得意分野に特化して生産をした方が、全体でも、個人的にも、より大きな成果を得られることになります。
社会全体の利益を最大化するためには、障害者の方々の長所を見つけ、それを活かした仕事に従事してもらうことを考えることがいかに重要なのかに気付かされます。
また、この比較優位の原則は、なにも障害者だけではなく、健常者にも言えること。よく「自分の得意分野だけに特化せよ」なんて言われますけど、あらためてその重要性を痛感させられました。
よし! 今晩あたり、この「比較優位の原則」を持ち出して、「家事や子育てよりも仕事に特化した方が、全体の成果は高くなるんだ!」と力説したいと思います。
…でも、「じゃ、私が働こうか?」なんて逆襲に合う危険性もあるので、やっぱり辞めておこうかな。。。