カキーンッ!!
思わず息を呑んだ観客たちの目線の先には、白球をミットに収める三塁手の姿が。
わき上がる歓喜の声と、球場を包み込む惜しみない拍手。
夏のドラマが、ついに、その幕を閉じたーー。
始まりは、9回表2アウト。
「10-4」
誰もが、中京大中京の勝ちを疑わなかった。
マウンドには、エース・堂林。
アルプススタンドを埋め尽くした両応援団。
その光景は、まさに「勝者」と「敗者」。
それが、である。
日本文理のエース・伊藤が打席に立つと、スタジアムに「伊藤、伊藤・・・」のコールが沸き起こる。
マウンドを映し出した映像が、まるで地震でも起きたかのように、観客の高鳴る胸と呼応するかのように、大きく揺れ始める。
そして、その声に後押しされたかのように、伊藤のバットから放たれた打球は、キレイに三遊間を抜けていく。
「野球は2アウトから」
これほどまで、その言葉の重みを実感するシーンに出会ったことがあっただろうか?
ジ・エンドかと思われた、神懸かり的なファールフライ。
脅威の粘りが生み出した、四球、そして死球。
「10-9」
終わってみれば、わずか1点差。
しかも、最後の痛烈なサードライナーが、もう2メートル横にそれていたとしたら。
これだから、高校野球は面白いーー。
そう思わせてくれるナイスゲームでした。
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