最近は、なんだかお金にまつわる本が続いていましたので。。。
久々?の農業系の本です。といっても最新の一冊ではなく、発行は2008年。最近の農業ブームが巻き起こる少し前ぐらいでしょうか?
著者は小さな種屋の主人。昔はあの手塚治虫氏の編集担当をしていたという、異色の経歴を持つ種屋さんが書いた本です。
今では一般の人が種を買うというと、ホームセンターなどで手に入れることが主流だと思いますが、
そんな一般に流通する種というのは、「F1種」といいまして、大手の種メーカーが独自の技術で改良し、一代限りで高い性質を出すように作り上げたものが大半を占めています。
そんな時代と逆行するように、この著者が営む種屋では、古くから自家採取によって選別を繰り返して出来上がった「固定種」といわれる種を扱っています。
「F1種」は、性質の異なる野菜を掛け合わせて作られているため、その種を取って栽培しても、遺伝学上、そのまま同じ性質の野菜が次の代も出てくるということはありません。
こうすることで、自家採取による種取りが事実上不可能となるため、種メーカーの技術や利益の流出が守られている、という側面もあるわけです。
別にこれが悪いわけではなく、大量生産・大量出荷を実現するためには、どうしてもバラつきを少なくし、品質の安定した一定の形の生産物を作る必要があるわけで、それには「一代限りだけど品質が安定している」というF1種の特性が、農家の生産力向上にとって、非常に大きな役割を果たしてきました。
そんな一代限りの「F1種」とは違い、「固定種」ではばらつきがあるものの、その種を自家採取によって次の代へと継承していくことができ、それを続けることでオリジナルの種を連綿と受け継いていけるのが最大の魅力です。
先日、ダーウィンの進化論の謎を追った『フィンチの嘴』という本を読みましたが、こうした進化の過程を実際に自分の目の前で体感できるのがこの「固定種」での野菜作りというわけです。
この本には、そんな固定種がずらりと紹介されていて、どれも魅力あふれる個性的な野菜たちばかり。
大規模な営農ではなく、家庭菜園での野菜作り、少量多品目の栽培を目指す人にとっては、とても参考になる一冊ではないでしょうか?
試しに僕もいくつか購入して、画一的な「F1種」とは違った、個性的な「固定種」の野菜たちを育ててみたいなと思います。
自家採取を繰り返して、オリジナルの種を積み上げていけば、数年後には全く新しい「オフィス・ヒライ野菜」たちが出来上がっているかも。
なんとなく、大好きな漫画『火の鳥』の世界に浸かっているようで、ちょっとワクワクしちゃうのは僕だけでしょうか?
2010年07月19日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック