ちょっと古めの本になるんですが。
先日、今も僕が執筆をさせていただいている地元経済誌の講演会に参加した際、「日本経済の需給バランスからいえば、これからデフレが解消されることはない」というお話を伺い、確かに、これだけ大量生産が行われ、慢性的なモノ余りの時代に、急激なインフレが起こることは考えにくいな、と今までの考え方を少し軌道修正したところですが、
そんな時、図書館でふと目にとまったので借りてみることにしたのがこの本。
正直、あまり期待はしていなかったんですが、でも、なかなかの当たりでした。
副題は「騙されないための裏読み経済学」。「デフレは終わらない」というよりも、こちらの方がメインタイトルにふさわしい内容になっています。
発刊は2008年5月。なのであのリーマン・ショック前の「戦後最長の好景気」と呼ばれていた頃の執筆ですが、その後の状況をなんとなく予期している節も読み取れ、なかなかバランス感覚に優れた思考をお持ちの方だな〜と思いながら読み進めました。
面白かったのは、新聞や雑誌、テレビなどのコメントが「いかに信用できないか」を説明する部分。新聞記者の仕事ぶりや内情が垣間見え、「それじゃあなかなか正確な記事は書けんわなぁ」と、同じ書き手のはしくれとして同情してしまう部分も。
あと、この手の記事だけでなく、政府の財政政策、日銀の金融政策においても、「直線的シナリオを描く」というバイアスがかかっている、という指摘はとても面白いと感じました。
未来とは本来「予測不可能」なもので、今がよければ、必ず将来には悪い時期が訪れるもの。そういう見込みなしに、しばしば「現在の状態の延長線上」で未来が語られることが多い、と筆者は指摘しています。
確かに。いい時もあれば、悪い時もある。それが世の常ですよね。だからこそ、「いい時期に先手を打つ」ことが常々大切だと痛感しますが。
本の後半には、「デフレの時代、私ならこうする。」という提言が示されていて、あたらめて「自己投資」への重要性を説くなど、経済の見識を広げるだけでなく、日々の生活に活きるエッセンスも。
単に「金融・経済の本」としてかたずけるには惜しい、今読んでも面白い良書だと思います。
2010年09月05日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック