こちらはちょっと前の本になりますが。
最近、がっつり農業をはじめつつあることもあり、「農薬の知識」は避けて通れないテーマ。
というわけで、頭ごなしに農薬を否定するのではなく、農薬と上手に付き合う方法を示した本を読んでみようと手に取ったのがコレ。
著者の方自身、以前は「農薬反対!」の立場でいろんな原稿を書いてきたそうですが、この本では、農薬が食料生産に与える恩恵を考えながら、メリット、デメリット両方の視点で持論を展開しています。
実は農薬というのは日進月歩で進化が続いていて、最近では、哺乳類には影響のない薬品や、特定の虫のみに高い効果を発揮するような新薬が採用され、どんどんと農作業の現場で使われているのだそう。
むしろ農薬を使わないことで、害虫に対抗するための毒性を持った野菜が栽培されたり…といった思わぬ弊害が発生することなどを指摘しています。
確かに、実際に農作物を栽培してみると、農家まかせの産直市場などの方がむしろ残留農薬などの危険度は高いのではないか?という疑問も抱きますし、
純粋に、「じゃあ農薬を使った野菜はそんなに危険なのか?」という根本的な部分についても、知らないことが多すぎるような気がします。
例えば、農薬汚染を取りあげた古典的名著、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』についても、本の中で再三忠告を続けるDDTによる発がんリスクは、最新の科学的検証の結果、「因果関係は認められない」という結論に至っています。
むしろ、この本を契機にDDTの使用が禁止され、、発展途上国ではマラリアの感染が異常に増加。スリランカではDDT使用時前の46年、280万人もいた患者が、DDT使用時の63年にはわずか110人にまで激減。DDT禁止後の67年には再び100万人に達し、その後も毎年200万人以上の患者が発生しているというのです。
そして今でも、このマラリア感染で、子供たちを中心に世界で100万人以上が死亡しているといいます。
このことについて、欧米では大々的な批判がなされ、なかには「レイチェル・カーソンの生態学的大虐殺」などというショッキングな記事を掲載した新聞まであるのだとか。
ただ、日本ではこうしたトピックを取り上げるメディアはそんなにないのでは?と感じます。
また、無農薬・減農薬野菜に取り組む農業従事者の中には、有吉佐和子著の「複合汚染」がきっかけだったと語る方が少なくありませんが、この内容についても、科学的な根拠に乏しいというのが主流な意見になっています。
ともあれ、単に「無農薬=善、農薬=悪」という二元論に終始するのではなく、生産者、消費者ともに、もっと客観的な目線で事実を見つめなおす必要があるのでは?と痛感します。
名古屋のグルメライターとして、そして新米新規就農者として、より確かな「食の情報」を届けていきたいな、と思います。
2010年09月19日
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